[57] 更科源蔵さんの詩


今度歌うことになった「海鳥の詩」の詩を書いた更科源蔵さん。他にどんな詩を書いているのかと詩集をめくっておりました。もちろん北海道の景色が多いのですが、そんな中、印象に残ったのが以下の詩です。

「7月」

夕立が熱さを洗って行ったあと
カッパは水かさのふえた沼の中で
蒪菜の茎につかまって首だけ出し
ポカンとしてきれいな空を見上げていた
すると目の前からびっくりするほど綺麗な虹が
キラキラする空へみるみるのびていった
(途中略)
あしのうらでしっかりと虹に吸いつき
次の足も虹の上にのせてみた
水からも土からも離れてカッパは一尺ほど空に浮いた
(途中略)
“俺は神様になれるかもしれない”
さうしてとうとう雲の峰にたどりつき
豆粒のやうに見えた姿が雲の中へ見えなくなってしまった
本当に神様になったかどうか
それきりカッパは沼へは帰って来なかった

<日本現代詩文庫「更科源蔵詩集」56頁
<詩版画集『河童暦』より>

[テノール高木です (2014/04/06 Sun 19:03) ]